山下民子さん(94歳)(撮影:藤澤靖子)
年齢に関係なく好奇心旺盛で前向きな人は、どんな日々を送っているのだろうか。そのヒントを探るため、手作り作品や音楽に情熱を傾けるおふたりに話を聞いた(撮影=藤澤靖子)

絵画教室で教えて60年

東京・港区のマンションの一室。壁には羊毛フェルトの動物や、色とりどりの花のコサージュ、リメイクした小粋なアクセサリー、バッグや彫刻など、さまざまな手作りの作品が飾られている。

その一つひとつを弾むような口調で説明してくれるのは、ハンドメイド作家の山下民子さん、94歳だ。

若い頃に開いた絵画教室を60年も続け、500人ほどに教えてきたという。ときには生徒たちとバザーを開き、福祉施設に寄付をすることもあった。

昔から社会貢献活動に関心が高かったが、2011年、東日本大震災の甚大な被害を見て、「被災地のために何か作って寄付したい」と考えた。

「子どもたちを励ましたいと考えて、最初に作ったのが『まけない(負けない)カルタ』。かつての絵画教室の生徒さんたちに描くのを協力してもらったんです。紙粘土で作った『猫のお雛さま』は、大変なときでも雛祭りを祝いたい方がいらっしゃるだろうと思って作りました」