長塚さんはこの映画で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞する。でも、その活躍は映像だけではなく、舞台にも及んでいる。たとえば私が一本だけ観た『オレアナ』(94年)とか。
――ああ、あれはかなり気に入ってる作品です。アメリカのデヴィッド・マメットが92年に書いた戯曲で、セクハラという言葉が世に出始めたころの話。
大学の先生が女生徒の肩を抱いて慰めてやったのをセクハラだと訴えられるという芝居で、最初は若村麻由美さん、再演(99年)は永作博美さんと共演しました。
でも僕は、どちらかと言えば大勢が出る群像劇より、一人芝居とか二人芝居とかが好きですね。一人芝居は、息子の圭史の書いた作品を演じたりしたこともありました。
では映画『UMAMI』(2022年)について。日本側からは長塚さんの他に、柄本明、小泉今日子などが出演している。
――フランスの名優ジェラール・ドパルデューが、以前に権威あるコンクールで負けたライバルのシェフ(僕です)を捜すために来日する話で、僕のところに彼を連れてくるサラリーマンの役が柄本さん。フランス人シェフが、人生を左右した旨味に再び挑むという話です。
この撮影の時のスタッフが『パリの中国人』のことを知っていたので驚きました。当時彼らは生まれてたかどうかくらい昔の映画なのに知っていて、フランスではエンタメ作品として当たった映画だったようです。