筆者の関容子さん(左)と

一から僕のシェイクスピアを

今後、彩の国さいたま芸術劇場の2代目芸術監督として、どんな活躍ぶりが見られるのだろうか。

――蜷川さんが演出なさってた「彩の国シェイクスピア・シリーズ」は、5本を残して亡くなられたんです。『アテネのタイモン』『ヘンリー五世』『ヘンリー八世』『終わりよければすべてよし』そして最後に『ジョン王』。これをすべて僕が演出してやり終えました。

蜷川さんのシェイクスピアに対する考え方は、晩年になるとだんだん変わっていくんですね。初期には装置もダイナミックで、役者も体格のいい、声の大きな者を使って、観客をあっと言わせるような演出。

それがだんだんといろんなことを省いていって、もっとお互いにちゃんと会話すること、そのことによってその場に起こる本当の出来事を大事に表現していきたいんだ。そうおっしゃっていた矢先に亡くなってしまった。僕はその蜷川さんの考え方に大賛成なんです。

最初に蜷川さんのシェイクスピアに出していただいた時、「鋼太郎の台詞は何を言ってるのか、誰に対して言ってるのかがよくわかる」と言われて、それまでは朗々と歌い上げるような台詞回しを好んでいらしたんだけど、「これからはちゃんと血と肉が伴った演技をしてほしい」ということになったんです。

僕は蜷川さんのやり残した5本をすべて演出、出演しましたから、これからはまた一から僕のシェイクスピアを上演していくつもりです。