現在は在宅ワーク。70歳まででも働きたい

では、真紀子さんは何歳まで働くつもりでしょう。「いまの仕事が続くなら、70歳まででも働きたい。今ぐらいのペースなら働けると思う」。ただ、独り暮らしをするほどの報酬はもらえません。「もう諦めました。この収入じゃ、家賃を払うのは無理です」。では何のために働くのかといえば、「お金をもらうことと、細々とでも社会と関わること」のためです。

実は真紀子さん、父亡き後の2010年から、本格的にフリーランサーとしての仕事を再開。元の会社からの受託で、大きな仕事を請け負いました。これが、どんどん多忙になりました。会社員だった時と同じように働き、管理職でもないのに責任も負いました。なんのために退社してフリーになったのか。東日本大震災の年には、あまりに大変で、「燃え尽きました。もう、やりきった!って思って。これからは、自分の好きなことをしたい、実入りが少なくても良いから、したいことをしたい、って。バーンアウト症候群ですよね」。45歳でした。

その後、バイトを探していて、もともと好きだったアートに関わる仕事の求人広告を見つけ、時給900円から働き始めました。ところが「能ある鷹」の爪には気付く人がいるものです。バイト先の会社の親会社に、真紀子さんの英語力を生かせる仕事があり、親会社から引き抜かれました。業務委託の契約労働で、事務職です。それが、今まで続いている仕事です。コロナ時期に在宅ワークになり、コロナ後も基本的には在宅勤務で、出社は週に1日程度です。

「いま、在宅ワークだから働き続けられますけど、これで通勤しなくちゃいけなかったら、無理です。生活が回りません」

というのも、姉と母との3人暮らしが、なかなかストレスが溜まるからです。結局は一番年若い真紀子さんが、なんだかんだと2人の面倒を見る羽目に陥っています。

『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)