紫外線の破壊力

では紫外線の振動数はどれくらいでしょうか。

紫外線の振動数は「1000兆回」です。大きすぎてわけが分かりませんが、電波の100万倍の回数です。しかも波長はナノメートル、つまりヒトの遺伝子やたんぱく質と同じサイズなのです。

『美容の科学:「美しさ」はどのようにつくられるか』(著:尾池哲郎/晶文社)

遺伝子やたんぱく質に1000兆回という振動が直接伝わってしまう。紫外線の危なさが実感できます。

紫外線の影響力の大きさを具体的に見てみます。

紫外線はその高いエネルギーで肌表面の化学反応に影響を与えます。

ビタミンDの合成のエネルギー源になるなど良い影響もありますが、多くの場合たんぱく質を破壊し、肌細胞を壊し、特に遺伝子への悪影響はたいへん深刻なものです。

遺伝子は直径が1〜2nmくらいの糸ですが、人体のすべてのたんぱく質の設計図です。

ここに紫外線が衝突すると、たんぱく質を作るための設計図である分子の結合が切れたり、ずれたりします。

傷ついた遺伝子は、間違ったたんぱく質や細胞を作り出すことがあります。これが体のメカニズムを狂わせたり、ガン細胞を生み出したりします。

波長の短い電磁波は紫外線のほかにX線やガンマ線と呼ばれるものがあります。紫外線の次に波長が短いのがX線で波長が数ナノメートルくらい。それよりさらに波長が短いのがガンマ線です。

X線やガンマ線は「放射線」とも呼ばれ、それらを浴びることを「被爆」と呼び、ガン細胞を生み出す可能性が知られていますが、紫外線にもそれと同じ破壊力があります。深刻な症状になるまでの時間に少し差がある程度です。

太陽から放たれるこうした危険な短い電磁波を吸収し、地表にまで届かないようにしてくれているのがオゾン層です。

オゾン層は、地球が誕生してしばらく時間が経ってから、ようやくできあがったことが知られています。

上空にできるまでほとんどの生物は海に生息していたのですが、紫外線が降り注いでいるために、生物は海から陸に上がることさえできませんでした。

これができることによって、生物は陸上でも生活することができ、徐々にその種類も多様になっていきました。

そのオゾン層も環境破壊によってどんどん薄くなり、場所によっては危険な電磁波が通り抜けてしまうオゾンホールもできてしまっています。

今は人類史上もっとも紫外線を気にしなければならない時代と言えます。