左から、美容ジャーナリストの山崎多賀子さん、キャンサー・ソリューションズ株式会社代表の桜井なおみさん、日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授の勝俣範之さん

 

つらい症状、壮絶な治療生活、けれど前向きに生きる……。「がん」と聞くとついそんなイメージを抱いてしまいますが、実際の経験者たちはどのような闘病期間を過ごしているのでしょう。乳がんサバイバーのお二人と患者を支える医師、それぞれが考える、がんとの上手なつきあい方を語ってもらいました。

抗がん剤治療は本当に壮絶?

勝俣 お二人はともに乳がんを経験されていますね。

山崎 私は2005年に、婦人科の女性検診で乳がんが見つかりました。最初は「超早期」という診断だったのですが、右胸を全摘せねばならず、落ち込んで。でも、同時にインプラントを入れるから「豊胸手術をするんだ」と自分に言い聞かせました。

桜井 ポジティブですね。(笑)

山崎 退院の翌日から4日続けて仕事をして、胸は痛いけど「私ってスーパーウーマン!」なんて、悦に入るくらい。ところが摘出した組織を調べてみたら、引き続き抗がん剤治療などが必要な状態であることがわかり、一気に奈落の底に沈んで。でも、抗がん剤もホルモン療法も、そのときは絶対に嫌だった。

勝俣 それはどうしてですか?

山崎 抗がん剤を使えば、がん細胞だけでなく健康な細胞もダメージを受ける。それで健康を失ったら元も子もないじゃないか、という恐怖に近い気持ちを抱いたのです。

勝俣 抗がん剤には、ネガティブなイメージを持つ方がほとんどです。

山崎 2週間ほど悩みに悩んだ末、治療を受ける決心をしたのですが。これからは、髪の毛もなくなって、ずっと家の中で「日陰者」の生活を送ることになるのか、と鬱々たる気分になりましたね。

桜井 私も2004年に右胸の全摘手術を受けたとき、「私は死ぬんだ」と思いました。というのも、若くして乳がんを発症した人が親族に何人かいて、40、50代でみんな亡くなっているんですよ。だからがんは、「治る」病気とは思えなかった。私は37歳でがんの宣告を受けたのですが、ついに私も“ビンゴ”だって、頭が真っ白。怖くなって、『般若心経』とか、宗教や哲学の本を読みあさりましたね。死の恐怖に打ち勝てるかもと思って。