また、家族の問題が起こってくる時期でもあります。夫が定年を迎えることで関係性に変化があったり、子どもの巣立ちによって「空の巣症候群」に陥ったり。親しい方との別れなども経験するでしょう。それらが心の負担になることもあるのです。

そんな方々に、皆さんより少しだけ人生の先輩である私がアドバイスするなら、「人間はみな年を取っていくもの。自分だけじゃない」と考えるようにすること。

年を重ねれば、シワも増えるし、体もうまく動かなくなる。けれど失ったものを数えて嘆くのではなく、少しずつ新しいステージに自分をなじませていく。そう捉えることが大切だと思います。

ただ、心の不調が続くようなら、迷わず精神科や産婦人科の医師に頼りましょう。その際は、複合的な視点で治療を提案してくれる医師を選ぶようにしてください。

私は一貫して診察中の《おしゃべり》を大事にしてきました。話すことによって人は解放される、というのが私の考え。対話療法とでも言うのかしら。自分の話をじっくり聞いてもらえると嬉しいものでしょう。とかく女性は親や夫に悩みを相談しても、「そんなもの知るか」と真剣に聞いてもらえないことが多いもの。

だから医師である私がその悩みの受け皿になろうと考えてきました。患者さんは話すことで自分の気持ちが整理できますし、私はその話から医師としてどうアプローチしていけばいいのかがわかります。

更年期以降の悩みを持つ人に、体内で起こる変化を医学的に説明したうえで、「みんなそうやって通り過ぎていくから、あなたもそんなに心配しなくて大丈夫よ」と伝えると、皆さんホッとした表情になりますね。