中目黒署に連れていかれると、阿岐本とは別々に話を聞かれることになった。日村は一人、取調室で待たされた。
 窓もない部屋でどれくらい時間が経ったのかわからない。一人で部屋に閉じ込めるのはやつらの手だと、日村にはわかっていた。
 これから何をされるのかわからないまま長時間放置されると不安が募る。
 特に気の弱いやつは、こういう緊張状態に置かれるとたちまち尿意を覚える。その尿意が不安を強め、さらに肉体的な不調を招く。
 悪循環に陥るわけだ。それでパニックになるやつもいる。
 わかっていても辛い。放っておかれるだけなら楽だろうと人は言うかもしれないが、そうではない。精神的な拷問に近いと、日村は思う。
 オヤジは何をされているだろう。おそらく、谷津から質問攻めにあっているのだ。谷津は、阿岐本の言葉尻を捉えて何とか罪に問おうとするはずだ。
 阿岐本が谷津の攻撃に屈するとは思えないが、法律には勝てないだろう。
 この先のことを想像すると、日村は暗澹とした気持ちになった。
 永神のオジキを怨みたくなった。永神が持ってきた話に乗って、神社や寺を訪ねたことが発端だった。