「ただし、宗教法人ブローカー自体は違法じゃねえ。それを警察が取り締まることはできねえ」
「現状では、谷津が高森を逮捕するわけにはいかないということですね?」
「そうだなあ……」
「じゃあ、どうします?」
「敵の出方次第だが……」
「西の大組織とうちじゃ喧嘩になりませんよ……」
「おい、誠司」
阿岐本の声が凄みを増したので、助手席の日村は慌てて振り返った。
「はい……」
「喧嘩ってのはな、ただ数が多けりゃ勝てるってもんじゃねえんだ」
「いや、それにしても桁が違うでしょう」
「勝つためにどうすればいいか、必死で考えるんだよ。それが喧嘩ってもんだ」
「はい」
オヤジには何か目算があるのだろうか。
日村の中ではまだ、取調室に閉じ込められていたときの嫌なイメージが尾を引いていた。事務所のビルに大勢の敵がなだれ込み、めちゃくちゃにされる様を想像していた。
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