「税金で食っている」という批判に辟易して

筆者自身、「税金で食っている」という批判には辟易して、結局、それも一因で官僚を辞めた。

給料は労働の対価だ。それにもかかわらず、日本ではとにかく税金が投入されているだけで、異様なくらいにケチをつけられる。

これはおそらく「税はとられるもの」「悪代官が税金を搾取している」という価値観が抜けきらないからだが、いずれにしろ、行政改革には霞が関の再生という崇高な目的と、熱気と狂気が混在して混沌としていた。

※本稿は、『没落官僚-国家公務員志願者がゼロになる日』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


没落官僚-国家公務員志願者がゼロになる日』 (著:中野雅至/中公新書ラクレ)

「ブラック霞が関」「忖度」「官邸官僚」「経産省内閣」といった新語が象徴するように、片や政治を動かすスーパーエリート、片や片や「下請け」仕事にあくせくする「ロボット官僚」という二極化が進む。地道にマジメに働く「ふつうの官僚」が没落しているのだ。90年代以降、行政システムはさまざまに改革され、政治主導が推進されてきたが、成功だったと言えるのか? 著者は元労働省キャリアで、公務員制度改革に関わってきた行政学者。実体験をおりまぜながら、「政官関係」「天下り」「東大生の公務員離れ」等の論点から“嵐”の改革30年間を総括する。