父の防衛本能
父は渋々着いてきてくれました。
父はいまいちミニ四駆大会になじめていません。口をぽかんと開けて放心状態みたいになっています。
これは父の癖です。人見知りが強く、知らない人がたくさんいる学校行事などでよくこの状態になっていました。
動かない「ASIMO」を想像してもらえればわかりやすいと思います。
たぬきが死んだふりをするように、これが父の防衛本能です。
息子の僕はたまったもんじゃありません。
僕は、「よし。このベアリングをつけてコースアウトを防ごう」とか、「ギアにグリスを塗ると速くなるんだった」とか独り言を父に聞こえるようにわざと大きな声で言いました。
ミニ四駆の醍醐味を必死に伝えようとしたのです。
まわりのお父さんと同じように一緒に作ってほしかったのです。
ミニ四駆のおもしろさを伝えることでこれからも父が見にきてくれるかもと期待したのです。