超過勤務がひと月で約378時間に

ワークライフバランスの重要性、過労死問題の捉え方が大きく転換したこともあるだろうが、実態がわかるにつれて常軌を逸していることが露呈した影響が最も大きい。

『没落官僚-国家公務員志願者がゼロになる日』 (著:中野雅至/中公新書ラクレ)

例えば、2021年のコロナ禍では、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室(コロナ室)の職員の超過勤務時間の最長がひと月で約378時間に達することが大きな話題となった。

かつても役所に365日寝泊まりしているという話はあちこちで聞かれたが、それはあくまで都市伝説。それに対して378時間は公表された数字だ。実際の残業はもっと多かった可能性さえある。

残業だけで月378時間にも達するのはどういう労働だろうか? 土日休まず7日間出勤して1日15時間働いたとして105時間、残りの273時間を20日で割り戻すと1日約14時間。睡眠時間さえ取れていない状態を想像してしまう。

長時間労働という言葉で割り切れるレベルではなくなっている。仮にこの職員の親がこの労働時間を知った時、「国を背負うエリートなのだから頑張れ」と子どもを励ますのだろうか……?