学生にまで認識された「ブラック霞が関」
例えば、人事院が行った「本年度就職活動を終えた学生を対象とする意識調査」(調査期間は2021年9月~12月)によると、職業として国家公務員を選ばなかった理由として、「採用試験の勉強や準備が大変」を挙げる者が最多(76,0%)で、「業務内容をこなすことが大変そう」「出身大学が処遇に影響しそう」「業務内容に魅力を感じなかった」と続くが、第5位は「国会に関係した業務が大変そう」、第6位は「超過勤務や深夜・早朝に及ぶ業務が多そう」となっている。
学生にまでブラック霞が関の認識が浸透していることがよくわかる。
最近、志願者が激減している東大生の場合、身近で霞が関の事情を聞かされることもあってか、警戒感はさらに強いものがある。
「朝日新聞」(2021年6月18日付)では、「東大新聞」で就活に関する記事を担当し、報道分野のベンチャー企業で働く東大修士課程の学生(休学中)の「激務なのに働き方改革が進まない。官僚になるには『戦地に向かう意気込み』が必要であるかのように見えている」という発言を紹介している。
※本稿は、『没落官僚-国家公務員志願者がゼロになる日』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
『没落官僚-国家公務員志願者がゼロになる日』 (著:中野雅至/中公新書ラクレ)
「ブラック霞が関」「忖度」「官邸官僚」「経産省内閣」といった新語が象徴するように、片や政治を動かすスーパーエリート、片や片や「下請け」仕事にあくせくする「ロボット官僚」という二極化が進む。地道にマジメに働く「ふつうの官僚」が没落しているのだ。90年代以降、行政システムはさまざまに改革され、政治主導が推進されてきたが、成功だったと言えるのか? 著者は元労働省キャリアで、公務員制度改革に関わってきた行政学者。実体験をおりまぜながら、「政官関係」「天下り」「東大生の公務員離れ」等の論点から“嵐”の改革30年間を総括する。