「なかったこと」にしてはいけない

沖縄という土地に対しては、複雑な思いがあります。僕は北の生まれなので沖縄は遠すぎて、子どもの頃には行く機会がありませんでした。大人になって初めて訪れた時、レンタカーを借りてあちこちに行ったんですけど、ひめゆりの塔であまりにも悲惨な歴史の痕跡を目の当たりにし、それ以上、沖縄をまわれない気持ちになり――。

思わず目を背けてしまった自分に対する忸怩たる思いもあるので、決して楽しいだけのところ、という印象の土地ではありません。

コザ騒動については、名前は知っていたけれど、実際に何が起きたのかはほとんど知りませんでした。今回、自分なりに調べてみて、こんなことがあったのかと愕然としました。同時に、これは戦争と一緒で、風化させて「なかったこと」にしては絶対いけない、という気持ちが湧いてきて。今年はちょうど沖縄復帰50年を迎えますし、世に問う意味がある作品だと感じています。

今までも作品と出会うたびに必ず学ぶことがありました。なかには自分が変化するきっかけになる出会いも……。この作品もきちんと自分のなかで消化し、ものごとを考えるうえでの糧にしたい。

俳優でいるからには、演じる作品から何かしら自分自身の内面に持ち帰らなくてはいけない。それが一俳優としての、僕の信条です。

この仕事を続けていくうえでは、健康管理も大事です。自分にとっては生活リズムがとても大切。子どもの生活時間に合わせて早寝早起きして、規則正しい生活をし、食べすぎない、飲みすぎないことを心掛けています。

僕はプロテインを飲んでジムに通う、みたいな身体作りは、あまりしたくないんです。アスリートなどを演じるなら話は別ですが、そうでない人を演じる時に、人工的な肉体作りは必要ないんですよね。

日頃、畑での作業をしていると、自然に身体ができていく気がします。そうやって、田舎での暮らしが俳優の仕事にもいい影響を与えて、ふたつがうまくまわっていくのが理想です。

田舎の生活でチャレンジしたいこともまだまだたくさんある。ゴミをアップサイクルする取り組みができないかということも考えたりしています。

僕の故郷の青森には南部裂織(なんぶさきおり)という、古くなった着物や布を裂いて織り直す技法があります。あれなどは、まさにアップサイクルなんですよね。具体的にはまだ何もありませんが、自分自身でやれることを探している最中です。