施設が父の意思を確認する必要性

説明後、相談員に言われた言葉でハッとした。

「ご家族が気に入ってくださっても、お父様がどうお思いになるかはわかりません。まずご家族が、お父様にご報告をなさってください。お父様が同意されたら、私どもがお父様の面会に行きます」

私は、施設側が病院に面接に来るとは思っていなかったため、落とされることがあるのだろうかと心配になった。

「え? なぜ、父が見学に来る前に面接があるのですか?」

「病院からお父様の健康状態や生活ぶりも伺っていますから、特に問題はないと思いますが、お父様の意思を尊重しなければなりません。お父様自身の意思を確認せずに入居を決めることはできないのです」

「はい、わかりました」

「面接の日取りについては、病院のソーシャルワーカーに相談して決めますので、ご家族のお立合いは必要ないです」

「よろしくお願いいたします」と言って、私は施設を後にした。翌日、見学した感想を父に伝えに行った。

秋晴れの空が見える病棟のラウンジで、父は穏やかな表情で私の報告を聞くと、やはり温泉に反応した。

「モール温泉は好きだ。ちょっとヌルっとした感じで、肌にいいんだよな。ヤマメ釣りをしていた頃、何回か十勝のモール温泉に入ったことがある。懐かしいな」

「パパがそのホームに入る気があるかどうか、施設の人が面会に来てくれるらしいよ」

父は笑顔で答えた。

「俺は、毎日、暇だ。『サンデー毎日』さ。いつ面会に来てくれてもいい」

(つづく)


◆漫画版オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく