公任が歌に詠んだ「名古曽の滝」
話を道長の時代に戻しましょう。
その大沢池エリアの一角に、有名な「名古曽(なこそ)の滝」の跡があります。「離宮嵯峨院」時代に設けられた滝なので、行成たちが訪ねたときには既に枯れていたのでしょう。そこで公任が詠んだのが、この歌です。
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
百人一首にも採録されているので、ご存じの方も多いはず。畳みかけるような「な」の音のリズムが心地良い、まさに“声に出して読みたい”名歌です。
滝の水の音は聞こえなくなってずいぶん経つけれど、その名声だけは、世の中に流れ伝わり、今でも聞こえているよ――そんな意味になります。
この歌が有名になったことで、この滝(滝跡)は「名古曽の滝」と呼ばれるようになったとか。そして1000年を経た今も、この歌と公任の名声は「なほ聞こえけれ」。歌を詠んだ公任も予想だにしなかったことでしょう。