服と髪型を変えて、気分も明るく
54歳で『緋の河』を出版した翌年あたりに、着る服や髪の色がずいぶん変わりましたね、と言われることが多くなりました。編集者に呆れられるほど服装のセンスが悪かったらしいんですけれど、自分にとってはあれが精いっぱい。人前に出るときも、とりあえずよそ行きのジーンズにシャツかセーターを着て行けば大丈夫だろうと思っていました。
でも、あるとき、北海道で活躍する劇団主催者と対談した際に、「その年齢で、その恰好はどうかと思います」と言われたんです。「その服装では、相手に失礼ですよ」と、暗に教えてくださったのだと思います。それで、その方が紹介してくれたスタイリストさんを訪ねたところ、「まず、その髪型がダメ!」と。
札幌の大通にあるヘアサロンに行って、縛れて便利だった中途半端なセミロングをジャキッとやりました。白髪も増えていたので金で脱色してまぶしてみたら、気分もすっかり晴れやかに。今は明るい色じゃないと、なんだか落ち着かないくらいです。
髪の色とスタイルを変えたことで、これまで着られなかった鮮やかなグリーンやブルーなどの色の服も着られるようになりました。ちょうど更年期を抜けたあたりで明るい洋服を着るようになったおかげか、精神的にもスッキリ。
仕事のほうも、編集者から提案されたお題であっても、自分の好きな方向に回転させて、思う角度で書けるようになってきたので、書くことがますます好きになっているのだと思います。編集者に言われたことは、1回は飲み込むんですけれど、その上で自分の欲する「答え」を出せる視点を見つけられるようになったと思います。勘しかないんですけれど、勘っていいですよ、なにひとつ他人のせいじゃない。