物書きが家に二人になり、私にとっては思いがけず、夫との新しい人生が始まったわけです。夫は書斎で膨大な調べものをしながら書き、私は台所のテーブルなどで書いていました。

彼が原稿に目を通してくれることも。いつも「あなたはもう作家なんです。堂々としていていいんですよ」と励ましてくれました。

戦争の悲惨さを次世代に伝えようと90歳まで仕事をした夫は、幸せな人生だったと思います。

そうそう、彼が亡くなった時、訊きたいことがあったの。「死んだらどこに行くの? そこでまた会えるのよね?」って。愛を教えてくれた最高の伴侶でしたから。

今は日々寂しいけれど、「書く」ことで救われています。何もすることがなかったら、89歳の一人暮らしに耐えられないんじゃないかしら。

振り返ってみると、半藤との結婚が、私の人生をつくってくれた。本当に楽しかったし、悔いはありません。