上野千鶴子さん(左)と澤地久枝さん(右)(撮影:宮崎貢司)
ノンフィクション作家の澤地久枝さんは、2020年自宅で転倒し、要介護生活を送りました。ひとり暮らしで最後まで機嫌よく暮らせる生き方を考える社会学者の上野千鶴子さんが、澤地さんを訪問。高齢のおひとりさまの多くが経験するこの危機をいかに乗り切ったかに迫ります(構成=篠藤ゆり 撮影=宮崎貢司)

倒れたままじっと4時間

上野 今日は、《おひとりさま》の大先輩にお目にかかりにまいりました。なんでも昨年5月に、腰椎圧迫骨折されたとか――。

澤地 はい。一時はベッドから起き上がることもできず、寝たきりの状態でした。

上野 先ほどいらしていた整形外科の訪問医の先生に伺いましたが、骨折直後は要介護4に認定されたそうですね。

澤地 リハビリをしてだいぶ筋力が戻って、今は要介護2です。

上野 すばらしい!

澤地 この1年、階段が急なので地下の書庫には降りなかったけれど、上野さんが来るというので昨日の夜中にモップを持って降りて、お掃除したの。ですからゆうべ寝たのは2時半くらい。

上野 えぇ~っ! その回復力は信じられません。昨年、どんな状況で骨折されたんですか?

澤地 私は宵っ張りの朝寝坊。午前11時頃、電話が鳴ったのでベッドから起き上がって出ようとして転んで。すごく痛くて、立ち上がることもできませんでした。その日、妹が作ったお惣菜を、妹の連れ合いが届けてくれることになっていたの。だから電話で妹に「パパを止めて」とお願いして――。

上野 えっ? 「すぐに来て」じゃないんですか?

澤地 来てなんて、思わないわ。