「自分が腰を痛めるまで、介護保険に興味がないし、使い方も知らなかった。弟もそうだったと思います。」(澤地さん)

介護保険の使い方を知らず

上野 話を戻すと、弟さんがいらした後、どうされたんですか?

澤地 動けないから、弟が派出婦(家政婦)さんを頼んでくれました。

上野 来られた方は澤地さんの様子を見て、ただちに要介護認定を受けてくださいとはおっしゃいませんでした?

澤地 言わなかった。

上野 介護保険を使われると、ご自分たちの仕事がなくなるからかもしれませんね。訪問看護ステーションから派遣されてきた方なら、すぐにケアマネジャーにつながり、骨折で動けなかったら即座に介護保険が使えたでしょうに。

澤地 私が上野さんに対していいサンプルになると思ったのは、自分が腰を痛めるまで、介護保険に興味がないし、使い方も知らなかった。弟もそうだったと思います。

上野 介護保険料を支払っているという自覚は?

澤地 それはありましたけど。

上野 派出婦さんは介護や看護の専門職ではありませんね。お料理とか身の回りのことをしてもらったのですか?

澤地 作ってくれたけれど、食欲がなくて食べられなかったわね。私、自分から「オムツをします」と言ったの。

上野 じゃあ、排泄の始末はしていただいたんですね。

澤地 はい。でも早くその状態から抜け出そうと思って。

上野 それを誰にも頼らず自力でやろうと思われたんですね。

澤地 まぁね。(笑)

上野 困ったお人だ(笑)。夜はどうなさっていたの?

澤地 夕方6時には帰るから、夜はなるべく排泄しないですむよう、水を飲むのも控えて。

上野 高齢者はね、脱水症状で簡単に亡くなってしまうんですよ。

澤地 自分が年寄りだという認識がないのよ。90といえば、年寄りのさらに上のはずなのに。(笑)

上野 もう立派なお年寄りです。