「オカン、見に来れんの!?」

大学の寮生活も早いもので半年。すっかり馴染んで、何よりあの翔大が大学に通っている!!
いまだ信じられない母。
しかもここまでのところ、大学の野球はまだまだ下級生、地道な練習の日々だが、大学の講義にはごくごく真面目に毎日通っているらしい。口が裂けても自分の大学生の時の話なんかできない。
「あしたの一限、解剖学か〜」
などというセリフが翔大の口から出てくるとは、去年までは思わなんだ。
今では立派な大学生である。

そんな翔大がちょっと興奮気味に、
「土曜日の慶應大とのB(Bチーム)戦、背番号もらってベンチに入れることになった!オカン、見に来れんの!?」
と言っている。

いやそれはめでたい。やったじゃん!背番号は奇しくも、父親がプロに入って最初につけた番号「37」。相手は天下の慶應大学だが、それはしっかり頑張らねばだ翔大。1打席でもチャンスをもらったらしっかり振ってー!

「37」の背番号をつけた元木翔大
背番号「37」は父・元木大介がジャイアンツ入団当初につけていた背番号。それはもう、父もうれしい…

この時点で全く行く予定になかった翔大の練習試合。朝瑛介を多摩川に送って駆けつけるには50キロ以上距離があって時間が厳しい。無理だよごめんね。

翔大は電話の向こうで明らかにガッカリしている。

小さい時、授業参観でも上半身だけきっちり後ろを向いて親を探していた子だ。出番はないかもしれないが、高校の時の大阪よりは駆けつけられる場所に親がいるのだから、初めてのベンチ入り、何としてでも観に来て欲しいということか。