怒りの発作

義母の認知症の初期段階で顕著だったのが、この「怒りの発作」だ。

週末のある日、突然わが家にやってきたかと思うと、私たちの態度が悪いと怒りはじめ、乗ってきた車にすぐさま戻り、急発進させて帰っていったこともある。引き留めようとした夫はもう少しで義母の車に轢かれそうだった。

(写真提供:Photo AC)

運転中に道に迷ったり、スーパーの駐車場で車を擦るといったトラブルも同時に増えたため、免許の返納と車の廃車を打診したが、とても強い抵抗にあったのは言うまでもない。ある日突然、目の周りに大きな痣(あざ)を作って帰宅したこともある。

あとから調べてわかったことだが、スーパーのレジで支払いをする際に店員さんと揉めて、店を飛び出し、その時に自動ドアに激突したとのことだった。

私がとても困ったのは、義母が知り合いに電話をして(2019年当時はまだ電話を使うことが可能だった)、自分の窮状を訴えるようになったことだ。

電話を受ける相手は義母が認知症だと知らないことが多く、「嫁にお金を盗まれた」「息子に家を乗っ取られる」といった義母の話に驚き、わが家に電話をしてくるパターンが増えた。その度に、実は……と説明すると、相手がようやく納得するということが何度かあった。

義母の介護を続けるうえで最初の難関となったのがこの「怒りの発作」で、その矛先は、ケアマネ、私、夫の3人に集中した。特にケアマネに対する強い怒りの感情は、申し訳ないことに現在でも続いている。

義母に認知症という診断が下されたことで、いよいよ本格的な介護の日々が始まってしまった。最初から何もかもうまくいったわけではなかったが、その都度、ケアマネからのアドバイスをうけ、怖々と、一歩一歩、踏み出す日々がスタートしたのだった。