厚生労働省の「令和4年度 国民生活基礎調査」によると、同居している家族が介護を行う割合は全体の45.9%で、そのうち<子の配偶者>は5.4%だそう。そのようななか、翻訳家・エッセイストとして活躍する村井理子さんは、仕事と家事を抱えながら、認知症の義母と90歳の義父の介護を続けています。そこで今回は、村井さんの著書『義父母の介護』から一部引用、再編集してお届けします。
「お父さんが浮気をしている」
とある日の夜中、就寝中の義父の額に義母が電化製品のリモコンを無慈悲に振り下ろした。
義母がヘルパーさんとの浮気を疑ったのが原因だった。
最初にそれを義父の口から聞いた時は、不謹慎とは思いつつも、「愛されてますねえ」などと軽口を叩いてしまった。気の強かった義母らしい行動パターンを聞いて愉快な気持ちになったのだが、就寝中を襲われたと聞いた以上、笑っている場合ではない。
「それは深刻ですね」と、報告を受けたケアマネは心配そうに言った。かかりつけ医に何が起きたかを話し、指示を仰いだほうがいいとのアドバイスを受けた私は、すぐに予約を取りつけた。そして数日後、私、夫、義父、義母というフルメンバーで、病院まで向かったのである。