厚生労働省の「令和4年度 国民生活基礎調査」によると、同居している家族が介護を行う割合は全体の45.9%で、そのうち<子の配偶者>は5.4%だそう。そのようななか、翻訳家・エッセイストとして活躍する村井理子さんは、仕事と家事を抱えながら、認知症の義母と90歳の義父の介護を続けています。そこで今回は、村井さんの著書『義父母の介護』から一部引用、再編集してお届けします。
義母に運転させる義父
アクセルとブレーキの踏み間違いによる交通事故が、頻繁に報道されるようになって久しい。中には悲惨な結果を引き起こした事故もある。
もちろん、加害者がすべて高齢者というわけではないが、高齢のドライバーによる危険運転が増えたのも実情ではないだろうか。
運転免許の自主返納について、何歳から返納すべきといった取り決めはない。しかし、65歳以上の高齢者には返納が推奨されているというのは、どこの都道府県でもだいたい同じらしい。
そして自主的に返納した運転手には様々な支援制度が用意されている。自主返納は、2022年は全国で44万件あまり。そのうち、75歳以上は約27万件だ。
それでは、村井家の場合はどうなのか。
義父は、2019年に脳梗塞で倒れ入院し、退院した直後、何の迷いもなく運転免許の自主返納を決めた。
私たち子世代が説得するまでもなく、「返納してくる」と晴れ晴れとした顔をして、義母の運転する車で警察署に行った……ツッコミどころがありすぎる。というのも、義母はその時点ですでに車の運転など、できないはずの状態だった。
それなのに、退院直後の義父は、義母を運転手として町内を自由自在に移動する気満々だった。義母に運転を頼む気があったからこそ、彼はなんの迷いもなくあっさりと運転免許を手放したというわけだ。
ちょっと待ったぁ! と義父を止めたのは、もちろん、私と夫とケアマネだった。