余命宣告について、私自身はもともと生への執着が薄いこともあって、「ああそうなんだ」という感覚でした。ただ、「後始末はきちんとしたい。中途半端なまま死ぬわけにはいかない」とは強く思ったんですね。

もちろんラジオ番組や講演会などの予定もありましたが、一番にはその時点で9割がた仕上がっていた本(『書いてはいけない』として刊行)を、何とか最後まで書き終えたいということがありました。

そのため12月27日、ラジオの生放送を終えた足で病院へ向かい、抗がん剤による治療を始めました。

ところが抗がん剤には相性というものがあるらしく、私にはその薬がまったく合わなかった。投与が始まるまでピンピンしていたのに、自宅に戻った翌日から急速に体調が悪化。

29日には自力で立っていられなくなり、食事はおろか水分も受け付けず、家族によれば3日間でイチゴ2~3粒しか食べられなかった。自分でも「ああ、このまま死ぬんだな」と覚悟するほどの状態になりました。

何より最悪だったのは、思考能力が完全に失われ、一文字も書けなくなったこと。これでは治療を始めた意味がありません。