「今年は見られないかも」と言われた桜の時期も過ぎ(写真提供:森永さん)

 

がんの公表後、私のもとにはいわゆる「がん治療に効くアドバイス」が1000件近くメールで寄せられました。

もちろん情報としては玉石混淆なのですが、マネージャーがそのなかから、がんの治療とは直接関係がないものの、いわば栄養ドリンクのように「弱り切った体を元気にする点滴」を受けられるクリニックの情報を見つけてくれて。

「このまま何もできずに死んじゃうより、一か八か賭けてみよう」と考えた私は、その日の夕方にクリニックへ行き、点滴を受けました。すると運よく賭けは当たり、翌日の朝には飲んだり食べたりものを考えたりすることができるようになったのです。

しかし抗がん剤の影響で体はボロボロ、血中のたんぱく質の数値などは軒並み激減、免疫もガタ落ちでした。そんな状態でもしコロナにでも感染したら、ひとたまりもありません。

そこで、体力を戻す目的でひとまずクリニックへ入院し、朝から晩まで多種多様な点滴を受け続けました。2週間ずっと寝たきりだったので、筋肉がすっかり落ちて、退院する時は車いす。

とはいえ、ベッドの上でも口述筆記で原稿を仕上げられたのは、本当にありがたいことでした。