長野・善光寺の参道にて(写真提供◎松井さん)

この年齢での結婚は家族を作るためではない

実は、私たちの結婚を後押ししてくれた先生の娘夫婦が、少し前に家を出ていきました。結婚前から先生は長年、娘夫婦と同居していましたが、生活は完全に別々でした。夕食も先生はスーパーで自分で1人分のお惣菜を買って、ご飯を炊いて食べていたのです。

彼女は「父親を年寄り扱いするのは失礼」と思っていたようですが、両者の気持ちに齟齬も多少あったように感じます。

そこに突如、私がやってきて、夕飯は私が作り2家族で食卓を囲む生活になりました。その変化を先生はもちろん、彼女も最初は喜んでくれていたと思います。

ところが同居して5ヵ月ほどたったお正月、おせちを囲んだ数日後に娘さんの夫から突然、家族のグループLINEに「話し合いたいことがあります」とメッセージが届いたのです。

話し合いの席で彼に「彼女は久子さんが怖い、顔を見ると過呼吸になると言うんですよ。僕たちが出ていくことも考えています」と告げられ、娘さんからは、「ずっと我慢していたけれど、もう耐えられない」と……。

私は長く一人暮らしだったので、家族4人の夕食を作れることが嬉しくて、張り切って料理をしていたのですが、娘さんには複雑な気持ちがあったのでしょう。一人娘で、父親のことが大好きだった人ですから。そこからは私抜きで先生と娘夫婦が話し合いを繰り返し、最終的には同居を解消することになりました。