遅れてきた青春「推し活」

須磨子さんは最近、これまで関心があってもできなかった「推し活」をしたいと、あるバンドのファンクラブに入りました。「推し活」する同士で友だちになって、「推し」についておしゃべりするのも楽しそうです。とはいえコンサートやフェスのチケットは全然当たらず、まだ推し友だちと知り合えてもいません。姉もファンなので、仕事中は手を動かしながら、彼らの音楽を聴いています。

きらきらと「推し」を語る須磨子さんの様子は、遅れてきた青春のようです。若かった頃に夫とは出来なかった楽しい経験を、いま取り返しているのかもしれません。

写真提供◎photoAC

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定年世代の転職も大変ですが、専業主婦からの再就職も厳しいです。正社員は夢の夢、非正規やバイトなど不安定な形態で働く人がほとんどでしょう。当然、賃金は安く、年収は低いです。でも社会保障は国民年金・国民健保ですから、保険料は高いです。そのうえ子どもも育てるなんて、本当にワーキング・シングルマザーは大変だと思います。

娘2人を育て上げた須磨子さんは、よくぞ体を壊さず、トリプルワークをこなしてきたものです。体力的、物理的にどれだけ大変だったことか。尊敬します。これまで子どもに注いでいたお金や労力、時間を、須磨子さんは、子どもが独立した今、ようやく自分のために使えるのです。元気いっぱいで明るくパワフルな須磨子さん。今後は自分の楽しみと老後準備にぜひ、お金も時間も費やしてほしいものです。

それにしても、減税! 須磨子さんに言われて気付きましたが、そういえば減税ってあったんですよね。モトザワも忘れてました。大企業のサラリーマンや公務員には「目に見えた減税」だったでしょうが、パートやバイト、フリーランサーや個人事業主は、「減税? あったの?」が実感では? 調べたところ、個人事業主は予定納税の時に所得税3万円分が減税され、住民税は減税された納付書が届くそうです。予定納税をしている人は、税務署から届いた通知の税額が普段より低いと気付いたかもしれませんね。給付金でくれていたら、全労働者が「もらった!」って実感できたのに。政府の感覚はやっぱり庶民とはズレてるように思うモトザワでした。

本連載をまとめた書籍『『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)』が発売中