『おくさまは18歳』の世界

当時のテレビは、青春もの、学園もの、スポ根ものが、視聴率を弾き出せる安定路線としてテレビ局では好まれていて、企画書の山も、ほとんどがそういった内容の番組でした。

老いも若きも幼きも、チャンネルの争奪戦に加わって、一家に一台のテレビが、茶の間の主役だった時代です。

<イラスト:岡崎友紀 『なんたって70歳! ― だから笑顔で生きる』より>

ジャンケンで負けると服をどんどん脱いでいくお笑い番組や、怖がらせて悲鳴をあげさせたり、泣かせたり、視聴率のためにはセクハラもパワハラもモラハラもやりまくれ〜!という娯楽番組作りの流れが見え始めたのもこの頃で、私はこういうノリにはどうしても馴染めませんでした。

コメディエンヌとして仕事を選びたいと考えている私でしたが、そのセンスを理解してもらうことの難しさに、常に直面していました。

ともすれば「ドタバタのお笑い」となってしまう危険を持つコメディ。

ここをしっかり演劇として完成させるのが勝負どころなんですけどね。

そのセンスを、実によく理解して演出に反映させたのが、湯浅憲明監督(映画監督。代表作は『ガメラ』シリーズ。のちにテレビドラマの演出も手がける)でした。

湯浅監督が『おくさまは18歳』のメイン監督でほんとうに助かりました。

私の表情の変化、目の動き、体の動き、セリフのメロディやリズムなども、全て見逃さずに演出しようと考えてくれて、とてもありがたかったです。

そして、共演の皆さんの「センス」も素晴らしかった!

哲也の石立鉄男さん、海沼先生の寺尾聰さん、校長先生の森川信さん、渋沢先生の冨士真奈美さんたちの、俳優としての確かな技術が加わったからこそ、『おくさまは18歳』の世界が完成したのだと思います。