追加の50万円を振り込むと、電話がぴたっと止まった。かけ直しても、「お客様のご都合でおつなぎできません」というメッセージが流れる。家に帰って次男にメールを送ると、即、「どうしたの?」と電話がかかってきた。

「それは振り込め詐欺だね。え! 150万円払ったの? すぐ警察に連絡して」という次男の声を聞き、私は(ああ、息子はあんなことやってなかったんだ)と安堵し、夫と警察署に行って被害届を出した。

カードローンのことを話すと、長男は「お金は口座に入れておくから。カードはすぐに処分してね」と言い、次男は50万円を渡してくれた。

息子たちは相談しながら、私たちが二度と被害に遭わないように電話の設定変更などをして、「気にしなくていいんだよ」と言って帰っていった。

この歳になって、なんで詐欺師のために緊張感を持たなければならないのかと思うと、やり場のない怒りがこみあげる。

しかし、普通に生活して家庭を守ってきた主婦がよき人生であったと幕を下ろすためには、責任を果たすことが必要だ。下劣な詐欺師に、心意気だけは負けてはいられない。

テキスト版はこちら