小泉の的確な能力

80年代から90年代にかけて『オリーブ』や『an・an(アンアン)』の編集長を務めていた淀川美代子は、普通のアイドルとは異なる独特の雰囲気を持つ小泉今日子を積極的に起用していたと述べている。

淀川 (前略)小泉さんには『オリーブ』の頃から、作っている雑誌によく出ていただいて。私が『オリーブ』から『アンアン』に移った1号めでも、確か髪を切っていただきました。(『小泉放談』253)

小泉自身も、「『オリーブ』に声をかけていただいた頃って、まだアイドルがファッション誌に出ていない時代だったんです。だから『オリーブに出られるんだ!』『アンアンにも!』って、いつも、すごくうれしかったなぁ」(『小泉放談』253)と当時を振り返る。

それまでファッション誌に登場したことのなかった小泉今日子が、すぐに誰よりも『オリーブ』や『アンアン』に相応しいアイドルになれたのは、小泉がもともとおしゃれ好きだったことに加えて、自身を客観的に見つめる力に長けていたからではないだろうか。

イメージチェンジする時期や方向性を見極める力。小泉の的確な能力はアイドルとしての自己プロデュース力となり、その後ますます開花していく。

 

※本稿は、『小泉今日子と岡崎京子』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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