たとえるなら、人の心は水面のようなものです

一時の感情や邪念は、水面に投じられる石であり、石は水面に波紋を描きます。
その波紋を鎮めることなど、人間にできるでしょうか。

手を差し伸べれば、その手がまた新たな波紋を作るだけ。
そんなときは、波紋が広がる様子を、ただ眺めていることです。
じきに波紋は微かなものとなり、静かな水面が戻ってくるでしょう。

心も、同じことです。
「おだやかに生きよう」と力み、そのときどきの喜怒哀楽に抗(あらが)おうとすると、かえって感情は大波となって、あなたをのみ込むでしょう。

そうではなく、感情が生まれ、消えていくのに任せてみるのです。
どうか、覚えていてください。

おだやかな人=喜怒哀楽がない人、ではありません。
むしろ、喜怒哀楽はおおいに結構。

喜怒哀楽がなければ、人間としての成長も、豊かな人生もあり得ないからです。
ただし「感情に囚われない、振り回されない」ことです。
そんな生き方に少しでも近づく道を、禅は説くのです。