猛暑と荒天のなか始まった、大相撲名古屋場所が、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で千秋楽を迎えた。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。
こういう時が一番危ない
大相撲名古屋場所は、優勝決定戦のすえ横綱・照ノ富士が前頭6枚目・隆の勝を満身の力で寄り切り、自身の目標とする10回目の優勝を果たした。名古屋場所での照ノ富士の優勝は初めてである。
昭和40年からコロナ禍での東京開催1回以外は、毎年大相撲を開催してきた愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)は老朽化のために取り壊されるので、ここでの大相撲開催は最後となる。2場所連続途中休場した照ノ富士の優勝か?一時は大関への期待もあった隆の勝の実力復活の初優勝か?来場した大相撲ファンへの感謝を込めたような熱い千秋楽だった。
14日目に照ノ富士は隆の勝に完敗して2敗。隆の勝は3敗で千秋楽に臨んだ。
隆の勝の対戦相手は先場所優勝した関脇・大の里。隆の勝は立ち合いからののど輪で、大の里に見せ場を作らせずに押し出した。「おにぎり君、強い!」と私は叫んだ。おにぎり君は、隆の勝のニックネームだ。
この段階で、私は東京の両国国技館の前に大相撲が開催されていた蔵前国技館での最後の優勝者を思い出した。平幕の多賀竜(最高位・関脇、鏡山親方)だった。愛知県体育館の最後を飾るのも平幕の力士なのかと。
照ノ富士の対戦相手は大関・琴櫻。今年の初場所で照ノ富士と優勝決定戦をして、琴櫻は負けている。過去の対戦も照ノ富士の6勝で、琴櫻は勝ったことがない。照ノ富士にとって、こういう時が一番危ない。正面解説の音羽山親方(元横綱・鶴竜)も「(琴櫻は)負けてきた中で、何かを学んだのではないか」と話していた。案の定、琴櫻は照ノ富士に上手出し投げで勝ち、10勝をあげた。