真矢 それだけじゃないです。さっき写真を撮る時も、「これじゃあ、普通じゃない。普通なんて面白くないわよ。どうする?」なんて何度もおっしゃったでしょう。
草笛 「大人っぽく振り返ろう」とかね。
真矢 一瞬一瞬を楽しんで、ひとつひとつの仕事を大切にされているなあって。これまで、私は自分が役者としてどうあればいいのか、試行錯誤した時期もけっこうあったんです。でもいまの草笛さんを見ていて思うことは、大事なのは自分を奮い立たせるような情熱なんだなって。私がその情熱を草笛さんの年齢まで持ち続けられるか、いまはわからないです。
草笛 私、情熱なんてあったかしら。(笑)
真矢 あります。情熱を燃やして生きてらっしゃる。
草笛 情熱って、なんか休まらない感じがあるじゃない。自分ではごく自然にやってるつもり。だってもうこの年齢になれば、いろいろ大変なことが増えちゃって、自然体でいるよりしょうがないから。だからいまのあなたに言えることは、「私、年齢を放っぽりました」ってことよ。
真矢 なるほど。……それで思い出したんですけど、佐藤愛子さんの担当編集者役を演じた唐沢寿明さんがね、撮影中の草笛さんを見ながら「女性を感じるなあ」っておっしゃったんですよ。
草笛 えっ(笑)。なに、もう1回言って。(笑)
真矢 「現役の女だなあ」って。しみじみ。それは草笛さんが常に自然体だから、生まれるものなのかもしれないですね。改めて「90歳、おめでとうございます」と言いたいです。
草笛 そんなこと言われたって……。90歳。何がめでたい!(笑)