「桐野さんの作品は、私のなかにある複雑な感情に言葉をつけてくれたり、感情そのものに気づかせてくれたりします」(板垣さん)

簡単に答えが出ないから考え続けたい

板垣 本もドラマも、みんなでこうして感想や自分の考えを話題にすることで「一時代を一緒に生きている仲間」になった気がして。そこが好きです。

桐野 そうですね。板垣さんはなぜドラマを作る道に進まれたんですか。

板垣 子どもの頃は自分の意見をはっきり言えるタイプではなかったので、読んだ本や観た映画を通して、「私と同じように思っている人、けっこういるんだなあ」「自分は一人じゃないんだ」と勇気をもらっていました。

本を作る仕事でもよかったんですけど、偶然が重なって入った映像の世界で、これからも物語を作っていきたいですね。桐野さんの作品は、私のなかにある複雑な感情に言葉をつけてくれたり、感情そのものに気づかせてくれたりします。登場する女性も、悩みながら力強いです。

桐野 『燕は戻ってこない』の主人公の理紀が代理母を引き受けたあと、そのことに悩んで故郷でやりたい放題するじゃないですか。私はそういうところが、けっこう好き(笑)。同化するより異化する人間をよく書きますね。傷があったりダメなところのある人が好きなんですよ。