板垣 私もどちらかというと同じで、いい人だけが出てくるドラマには個人的には共感できないんです。ダメだけど必死に生きている人を見ていると勇気づけられるし。
桐野 でも、どこかが欠けている人間を描くのは難しいですね。たとえば多くの人はこういう反応をするのに、この人だけは別のとんでもない反応をする。そこをどう説得力を持たせて具体的に描くか。
板垣 自分ではない人間がなぜそういう行動をとるのかを考えるのは、難しいですよね。
桐野 なぜ一線を越えたのか。越える前と後とで、どう世界は変わるのか。その一線に苦悩が詰まっているわけで、そういうことをぼんやり考えている時間って案外楽しかったりもして。
小説はそもそも正解を示すためのものではないし、わけのわからない状況を書いていくのが面白いところでもある。でもドラマだと、面白がってばかりもいかないでしょうし。
板垣 媒体の特徴として、やはり視聴者のカタルシスを考えざるをえないですけど、私もあまり「こうだ」と言い切りたくなくて。ドラマを観てどう感じるかは観る人に委ねたいし、答えが簡単に出るようなことは大事なことじゃない気がするので。
桐野 本当に大切なことは、答えが永遠に出ないのかもしれませんね。
板垣 考え続けることが大事なんだと思います。それを、物語を作ることで続けていきたいです。