2022年11月10日、インドネシアのジャカルタで行われた国際出版連合世界大会で「表現・出版の自由」をテーマに登壇した桐野さん
犯罪に手を染めてしまう主婦、代理出産を迫られた貧困女子…社会に顧みられることのない女性たちと、その痛みを鋭い視点で描き続ける作家・桐野夏生さん。『婦人公論』2022年12月号よりスタートした新連載「オパールの火」は、#MeToo運動のはるか昔、ピル解禁を訴え活動を始めた一人の女性が主人公。彼女はなぜ人々に奇異の目で見られ、やがて世間から忘れ去られていったか……。フェミニズム黎明期にスポットをあてた小説です。精力的な執筆活動をしながら、2021年に女性初のペンクラブ会長に就任した桐野さんが、インドネシアのジャカルタで行われた国際出版連合世界大会のゲストとして招かれました。現地での模様をレポートします。(文・写真=中央公論新社・書籍編集部)

3年ぶりの開催となった国際出版連合世界大会

2022年11月10日から3日間、国際出版連合世界大会が、インドネシアのジャカルタでコロナ禍を経て3年ぶりに開催されました。

出版業界にも国際的な団体があることをご存じでしょうか。表現の自由や著作権の保護、また出版業界の発展を推進するためのNPO団体、国際出版連合(International Publishers Association=IPA)は1896年に創立。世界73カ国で構成され、平時は2年ごとに業界の課題を議論するための大会を開催しています。

『OUT』や『グロテスク』など多くの著作が翻訳され、海外でも知名度の高い桐野さん。世界的な大会でスピーチを行うという機会に、担当編集者が同行しました。

ジャカルタの高層ビル群

久々の海外旅行に胸ときめいたものの、インドネシア入国に必須の「PeduliLindungi」というコロナワクチン接種を証明するアプリが鬼門で、日本の「COCOA」アプリ同様不具合が多く、何度も携帯を放り投げることに……。入国時だけでなく、ジャカルタ滞在中はホテルやショッピングモールなど、あらゆる場所で提示を求められました。