モスクと教会が隣り合って建っていた
終演後、桐野さんとともにジャカルタの書店に立ち寄ると、英訳版『OUT』が並んでおり、各国で読まれる作品力の強さを実感。その後、東南アジア一の大きさを誇るモスク「イスティクラル」にも足を運ぶと、隣りには大聖堂「カテドラル」が建ち並んでおり、案内人の方から「モスクと教会はなるべく隣同士になるよう作られています」と説明を受けました。
インドネシア人の大半はイスラム教信仰ですが、イスラム教だけでなく、ヒンドゥー教、キリスト教、仏教、儒教が「国教」として定められている多宗教国家でもあります。そのため、それぞれを尊重し、互いをなるべく理解し合えるよう、物理的な距離の近さを意識しているそうです。奇しくも桐野さんが語った「他者への想像力」の重要性について考えさせられる瞬間でした。
人間の弱さを見つめ、表現することに真摯に向き合い続けてきた桐野夏生さんの新連載「オパールの火」。国際的な場での刺激を得て、どんな展開を見せるのか。女性に寄り添い続ける桐野さんが紡ぐフェミニズム黎明期の物語から、目が離せません。