七実に何事も気の持ちようと教えられる

大学に入って間もなく七実は3つもアルバイトを始める。朝は引越屋の手伝い、昼は交通整理、夜は野球場でのコーヒー販売。ひとみを沖縄旅行に連れて行くためである。

明るかったひとみが車椅子の生活になってから変わった。屈託のない笑顔を見せなくなった。七実にはそれが辛かった。そんなとき、ひとみが耕輔の生きていたころに家族で旅行した沖縄を思い出し、「またいつか行ってみたいな」とつぶやいた。

七実は即座に反応し、「連れて行く!」と宣言する。ひとみに楽しかったころの思い出をなぞらせたら、再び笑顔を取り戻してくれると考えたのである。

ここでもドラマを未見の人は、悲壮感を漂わせながら働く七実の姿を思い浮かべるかも知れない。実際には違う。どのバイトも本人は楽しみ、同僚から愛された。

何事も気の持ちようだとあらためて教えられる。どんなに恵まれた環境に置かれている人も本人が不満に満ちていたら不幸だ。逆も同じ。大好きな母親のために働く七実は溌剌としていた。

七実は沖縄旅行の費用約28万円を稼ぎ出す。しかし、ひとみにそのチケットを渡したのは七実1人ではない。「これ、草太と私から」と七実。僅かであろう草太の小遣いも旅行代に加えられたからだ。草太は満足げに笑った。姉弟愛に胸を突かれた。