「幸せとは何か」を問い掛ける

ひとみ役の坂井真紀(54)はトレンディドラマで活躍していた1990年前後から演技力に定評があったが、このドラマが新たな代表作になるだろう。車椅子の生活になって絶望しているが、子供たちのために明るく振る舞っている。そんな複雑な胸中を巧みに表している。

草太役の吉田葵(17)は第96回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされた役所広司(68)主演の『PERFECT DAYS』(2023年)にも出演した。

ハンデのある人の役は実際にハンデのある人がやるべきだ。ハンデのある俳優たちはそのチャンスを待っている。米国では以前からからその流れに向かっている。2022年には3大ネットワークの1つであるCBSがハンデのある人に公平な配役をする指針をつくった。  

このドラマにはもう1人、忘れてはならない登場人物がいる。ひとみの母親・大川芳子である。耕輔とひとみが倒れるたび、家事の助っ人として岸本家にやってくるパワフルな女性である。美保純(63)が演じている。

教養というものには関心が薄いようだが、人生を知っている。ひとみの元の明るさを取り戻そうと躍起になる七実を静かに諫める。「ひとみはひとみや」。人間が境遇や年齢によって変わるのは仕方がないと考えている。

45分の放送時間で何度も笑わせてくれるが、繰り返し「幸せとは何か」と静かに問い掛けてくる。原作は気鋭の若手作家・岸田奈美氏(32)の自伝的エッセー。観ると元気になる。

文責◎高堀冬彦(放送コラムニスト)


(『家族だから愛しんじゃなくて、愛したのが家族だった』/(c)NHK)

【放送情報】

ドラマ10『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
<NHK総合> 毎週火曜 よる10:00~

【放送予定】
2024年7月9日(火)スタート <全10話>
(7月30日、8月6日の放送は五輪のため休止。
 第4回は8月13日に放送。13日の深夜には1~3回の集中放送)


【原作】
岸田奈美
【脚本・演出】
大九明子
【脚本】
市之瀬浩子、鈴木史子
【音楽】
髙野正樹
【出演】
河合優実、坂井真紀、吉田葵、福地桃子、奥野瑛太/林遣都、古舘寛治、山田真歩/錦戸亮、美保純ほか
【制作統括】
坂部康二(NHKエンタープライズ) 伊藤太一(AOI Pro.) 訓覇圭(NHK)