関西人は〈まむし〉がお好き!?
ちなみに、関西ではうなぎ屋さんに「まむし」というメニューがあります。「毒蛇のマムシを食べるの?」と驚かれるかもしれませんが、ご安心ください。「まむし」とはうな丼のことです。
一般的にうな丼といえば、ごはんの上にうなぎが乗っていますが、「まむし」は、ごはんの上だけでなく、ごはんの中にも焼いたうなぎが挟まれています。諸説ありますが、ごはんの間で蒸されたうなぎ、「間蒸し→まむし」と呼ばれるようになったそうです。
焼いたうなぎの香ばしさとしっかりとした身質と、蒸されたうなぎの柔らかさの両方を味わえるのが「まむし」の魅力。筆者の出身地である和歌山県でも「まむし」を食べられるうなぎ屋さんがあり、大人気です。子どものころ、母が作ってくれたうな丼にも、ごはんの間に小さなうなぎが挟まれていて、発見するたびに大喜びしていたのを覚えています。
ちなみに、大阪生まれの小説家、織田作之助は代表作の『夫婦善哉』にも「まむし」が登場します。
〈都合五軒の出雲屋の中でまむしのうまいのは相合橋東詰の奴や、ご飯にたっぷりしみこませただしの味が「なんしょ、酒しょが良う利いとおる」のをフーフー口とがらせて食べ……〉。
たれがしみたごはんの中で、ほわほわと蒸された地焼きの香ばしいうなぎ。想像しただけで食べたくなってきますね。
『ごはんに化ける ズルイおつまみ』
(著:藤岡操/EDITORS)発売中!
コロナ禍のいま、自宅で楽しむおつまみの本が人気です。
私は飲むけれどパートナーは飲まないというケースや、お酒を嗜む夫婦のほかに子どもがいるケースも少なくはありません。
そこで、ワインのおつまみだけど、ちょっとしたアレンジで晩御飯のおかずにもなる! 1品つくれば家族みんなで楽しめるそんなレシピを集めました。
難しいことも面倒なこともなし。身近な食材と調味料の組み合わせだけで、楽しみはうんと広がります。どこで売っているのか分からないおしゃれ過ぎる食材も使用していません。食材も、料理の工程も少ないものばかりです。
揚げ物を食べたいけれど衣の準備が面倒……ならば、春巻きの皮を使ってパリッと焼こう!
冷蔵庫に肉も魚もない……ならば、ゆで卵と粉チーズでご馳走にしちゃおう!
和風の煮物とワインを合わせたい……ならばオリーブオイルと黒コショウをかけるだけで相性抜群に!
そんな気楽な発想で、ワインと一緒の晩ごはんを自由にのびのび楽しみませんか?
版型はコロンとした正方形に近い可愛いかたち。簡単な工程なので、本と睨めっこする必要はありません。いつまでも手元に置いておきたい、パラパラ眺めるだけで楽しくなれるそんなレシピ本です。