関西人は〈まむし〉がお好き!?

イメージ(写真提供:Photo AC)

ちなみに、関西ではうなぎ屋さんに「まむし」というメニューがあります。「毒蛇のマムシを食べるの?」と驚かれるかもしれませんが、ご安心ください。「まむし」とはうな丼のことです。

一般的にうな丼といえば、ごはんの上にうなぎが乗っていますが、「まむし」は、ごはんの上だけでなく、ごはんの中にも焼いたうなぎが挟まれています。諸説ありますが、ごはんの間で蒸されたうなぎ、「間蒸し→まむし」と呼ばれるようになったそうです。

焼いたうなぎの香ばしさとしっかりとした身質と、蒸されたうなぎの柔らかさの両方を味わえるのが「まむし」の魅力。筆者の出身地である和歌山県でも「まむし」を食べられるうなぎ屋さんがあり、大人気です。子どものころ、母が作ってくれたうな丼にも、ごはんの間に小さなうなぎが挟まれていて、発見するたびに大喜びしていたのを覚えています。

ちなみに、大阪生まれの小説家、織田作之助は代表作の『夫婦善哉』にも「まむし」が登場します。
〈都合五軒の出雲屋の中でまむしのうまいのは相合橋東詰の奴や、ご飯にたっぷりしみこませただしの味が「なんしょ、酒しょが良う利いとおる」のをフーフー口とがらせて食べ……〉。

たれがしみたごはんの中で、ほわほわと蒸された地焼きの香ばしいうなぎ。想像しただけで食べたくなってきますね。
 

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