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22年間フジテレビの『情報プレゼンターとくダネ!』でキャスターを務めた小倉智昭さん。2016年には膀胱がんであることを番組で公表。その後、膀胱摘出手術、抗がん剤治療についても番組を通して生報告してきました。この度、『とくダネ!』でコメンテーターを務めた古市憲寿さんからの質問に答える形で、自らの半生を語った『本音』を上梓。深刻な病状や奥様との別居などの窮地も自ら笑い飛ばす軽妙な語りは今なお健在。現在の暮らしぶりから、著書のことまでざっくばらんに伺います。
(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社 奥西義和)
長年連れ添った妻と終活に向けて話し合い
2022年、肺がんの過酷な抗がん剤治療で朦朧とする意識の中、小倉さんは三途の川と思しき場所で亡き父と遭遇しました。「俺はまだ行かない」と伝えたといいます。以来、長年連れ添った奥様と終活に向けて、前向きな話し合いを重ねてきました。奥様と義母との3人暮らしを見直すきっかけになったのは……
――『本音』にも、妻と別居することになった経緯を書いてます。決して不仲になったわけじゃない。
世がコロナ禍になって僕のやっていた事業の雲行きが怪しくなり、今まで貯めてきた資金を吐き出さざるを得なくなりました。不運なことにその時期、僕の病気も重なってしまった。
抗がん剤治療の入院時、従業員に給料を支払ってもらおうと、妻に通帳を渡したら、「これ以外の通帳はどこですか?」って聞いてきたの。妻が思ってた残額じゃなかったんだろうね。「他にはないよ」って答えたら腰を抜かすほど驚いていた。(笑)
結構お金を稼いできたけれど、使っちゃったんだよ。若い頃、アナウンサーとして独立した何年かは消費者金融のお得意さんになるくらい苦労した。『本音』には、その頃のことをかなりぶっちゃけて書いたつもり。経済的に苦労した時期があると、倹約家になる人もいるけど僕は逆だった。使えるようになったらとことん使っちゃう。自分のためにも人のためにも。
僕は自宅とは別にビルを借りていて、そこにいただいたものや、これまでコレクションしてきたものを大量に置いていたの。老後の資金繰りのことを考えると、収蔵品のために高い家賃や光熱費を払い続けるのはやめようということになった。
だけど、それらは1フロア60畳の2フロアを占領するほどの量。本は2万冊、DVDや CDは3万点、その他カメラやオーディオ、ギターや絵画、細かなものもたくさんあった。長いことかけてコツコツ集めたものだし、珍しいものもある。売ったり、寄付するにしても限度がある。
手詰まりだった僕に向かって妻が「私と母が実家に戻ってスペースを空けるからリフォームして、この家に捨てられないもの全部収めなさいよ」と言ってくれた。「身体も思うように動かないんだし、老後は好きなものに囲まれていたほうがいいでしょ?」と。
それを聞いた時は、「ありがとう」というより「え?俺じゃなくて母親をとるの?」ってショックだったよね(笑)。通い妻してくれるって言うけれど、1週間に3回が週1回になり、どんどん間遠になっていくんじゃないの?と。そう言うと妻には「私ってそんなに信用ないですか?」と言われちゃった。今まで妻は本当に良くしてくれたし、老老介護で僕と母親の2人もみるのは大変です。僕も納得して去年、大々的な整理と引っ越しを始めました。