利久七則
一、茶は服のよきように点て
「飲む人にとって丁度良いお茶を点てなさい」と、気配りの大切さを言っています。基本はもちろん大切ですが、お湯の温度やお茶の分量など、一人ひとりに寄り添って心を込めることが、心地よい人間関係の秘訣ではないでしょうか。
二、炭は湯の沸くように置き
「炭はお湯がきちんと沸くように置きなさい」と、事前準備の大切さを言っています。準備をしっかりすることで、自身も安心と自信を持つことができます。
三、花は野にあるように生け
「花は野に咲いているように生けなさい」と、自然体でいることの大切さを伝えています。私たちも、周りの目を気にしたり見栄や虚勢を張ることなく、花のように自然体でいることが一番美しい姿なのではないでしょうか。
四、夏は涼しく冬暖かに
「相手を思い、一年を通じて心地よい空間を」と、思いやりの心の大切さを伝えています。利休の時代はお客様に対し、五感で涼しさ・暖かさを感じさせる工夫をしていました。エアコンのおかげで快適な一方、忙しい毎日の中で季節感を忘れがちな今こそ、心に留めておきたい言葉です。
五、刻限は早めに
「時間に余裕を持ちなさい」と、気持ちにゆとりを持つことの大切さを伝えています。時間に余裕がないと、気持ちが焦ってしまい周囲を思いやることができなくなりますよね。自分の中の時計を少し進めておくことで心に余裕が生まれ、全てにおいて良いスタートを切ることができるはずです。
六、降らずとも傘の用意
「雨が降らなくても傘の用意を」と、不測の事態に備える大切さを伝えています。どんな時でも備えを万全にすることで焦ることなく臨機応変に対応でき、自分自身も安心できます。
七、相客に心せよ
「同席したお客さまに気配りを」と、互いに尊重し合う大切さを伝えています。30代の生徒さんが「『利休七則』は500年前の言葉なのに全く古さを感じないし、今のビジネスの基本にも通じるものがあって、大切な仕事の前にいつも思い出しています」とおっしゃっていました。
利休が伝えたかったのは作法や形ではなく、全て「心」についての教えでした。形だけ整っていても、心がなければそれは本物ではない、ということです。
※本稿は、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている「凛とした人」になる和の教養手帖』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
『「お茶」を学ぶ人だけが知っている「凛とした人」になる和の教養手帖』(著:竹田理絵/実務教育出版)
30年間現役のグローバル茶道家が、500年の歴史を持つ和の教養を8つのジャンルに分け、読みやすくコンパクトにまとめました。
現在和文化への回帰が高まっている30-50代の女性に、また、急速に回復しつつあるインバウンドの方々、海外での外国人の方々とのコミュニケーションにも必携の一冊です。