「その男が、花丈組二代目というのは間違いないんでしょうか」
 多嘉原会長に訊かれて、阿岐本は永神を見た。
「この弟分が調べたことなんですが……」
 永神は慌てた様子で言った。
「間違いないと思います」
 阿岐本が言う。
「こいつは粗忽者ですが、情報は確かなはずです。高森と中国人のことも耳にしたらしいです」
 多嘉原会長が聞き返す。
「中国人……?」
 永神がこたえた。
「どうやら、高森は中国資本を当てにしている節があります。今、中国の富裕層が日本の土地を買いあさってますから……。宗教法人をほしがっているという話もあります」
 多嘉原会長が永神を見据えた。
「中国人が日本の宗教法人を……」
 その眼を見ただけで、永神が縮み上がった。日村もぞっとした。
 永神がこたえた。
「はい。高森はその仲介を頼まれているのかもしれません」
「その高森ってやつは、金に困っているんですかね……」
「さあ、それはどうでしょう」
 しどろもどろの永神に、阿岐本が助け船を出した。
「今どきのヤクザは、みんな金に困っているんじゃねえですか。聞くところによると、高森は組事務所も持てずに、組の実態がほとんどねえらしいです」
「なるほどねえ……」
「……で、その原磯なんですが、駒吉神社の大木さんのところに誰かを連れていったらしい」
「高森でしょうか」
「そうでしょう」
 多嘉原会長は一つ溜め息をついた。