「あ、日村さんか……」
「その後、どうです?」
「原磯が連れてきた男は、やっぱり宗教法人ブローカーでした」
「何という人でした?」
「高森です」
「連絡先は聞いていただけましたね?」
「ええ。名刺を置いていきました」
「少々お待ちください」
日村は今の話を伝え、阿岐本に電話を渡した。
「お電話代わりました。阿岐本です」
それからしばらく大木とのやり取りがあった。「……では、また原磯さんとお話をさせていただきましょう。場所は、そうですね。『梢』でどうですか。……ええ、我々はこれから綾瀬を出ます。……はい。午後七時ですね。承知しました」
阿岐本は電話を切り、日村に返した。
「大木さんたちが行きつけの『梢』というスナックがあります」
阿岐本が多嘉原会長に言った。「そこで七時に待ち合わせをしました」
「では、参りましょう」
「会長、お車やお供の方は?」
「電車で来ました。私はいつも一人です」
「では、うちの車にお乗りください」
「恐縮です」
日村は「失礼します」と断り、部屋を出ると稔に『梢』へ行くと告げた。
奥の部屋に戻ると、永神の声が聞こえた。
「アニキ、俺も行こうか……」
阿岐本がこたえた。
「おまえはいい。何かあったら連絡するから」
「じゃあ、俺は自分の車で待機しているから……」
「ああ、そうしてくれ」
阿岐本が多嘉原会長に言った。「では、参りましょうか」