なぜドーピングはいけないのか?

日本でも、例えば2016年にJ リーグのサンフレッチェ広島で、ドーピング違反が発覚しました(サンフレッチェ広島、2016)。

しかし、違反した選手は、チームで供給される米国製のサプリメントしか使っていなかったため、そのサプリメントを調べた結果、メチルヘキサンアミンという興奮剤を含んでいることがわかりました。

『一般教養としてのサプリメント学』(著:杉浦克己/草思社)

チームのトレーナーが、製造元にドーピング禁止物質を含まないかを確認しており、チームドクターも納得して使用していました。

そのため、選手の過失とはならず、選手は試合に出られるようになりましたが、これも海外製のサプリメントを十分に検査せず、先方の言うことを鵜呑みにしたことによるものなので、安全性の証拠は取っておかなければなりません。

実は、シドニー五輪においてドーピング違反になった外国選手が、禁止物質が配合されているのに表示されていないサプリメントを使用していたことが発覚して、IOC は欧米のサプリメントを634種類購入してドーピング検査をしました(IOC,2002)。

その結果、94種類(14.8%)の製品から、タンパク同化ステロイドなどの禁止物質が見つかったので、各国のオリンピック委員会に警告文を出し、日本ではJOC から各競技団体に通達文が出されました(下図)。

JOCからの通達文(JADAホームページより)<『一般教養としてのサプリメント学』より>

この頃から、海外製品には気をつけるようにといわれるようになり、競技団体のドクター、トレーナー、栄養担当が協力して、選手の使用しているサプリメントの安全性を調べるようになりました。

なぜドーピングがいけないのかといえば、以下のことが挙げられます。

・選手の健康を害する
・アンフェアである
・社会に悪影響を与える
・スポーツの価値を損なう

よって、サプリメントは、(医薬品の範疇には踏み込まず)食品の範疇でスポーツ栄養学的な研究をして、アスリートを支えていかなければなりません。