(写真提供:Photo AC)
2024年3月、紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した消費者に、健康被害が多数発生したことが報告されました。現在も調査が進められるなか、「サプリメントに対しては、過剰に反応せず、メディアリテラシーをもって冷静に対処することが求められる」と語るのは、スポーツサプリメントの企画・開発に関わった経歴を持つ、立教大学特別選任教授の杉浦克己教授です。今回は、杉浦教授の著書『一般教養としてのサプリメント学』から、健康に生きるためのライフスキルを一部ご紹介します。

シドニー五輪のドーピング騒動

ドーピングは、スポーツサプリメントのダークサイドともいえます。

有名なのは、米国のサプリメント会社『BALCO(バルコ)』のスキャンダルです(CNN,2022)。

バルコ社は自社のサプリメントに、筋肉増強ステロイドや、持久力を高めるエリスロポイエチンなどを配合し、一流アスリートに使用してもらい、さらに彼らが普及させて他のアスリートにも使用を広げていきました。

有名なのは、陸上競技のメダリスト、マリオン・ジョーンズです。彼女は、元夫のC・J・ハンターからの勧めにより、バルコのサプリメントを用いて激しいトレーニングに耐え、シドニー五輪で金3個を含む5個のメダルを獲得しました。

しかし、バルコ社のスキャンダルが、メジャーリーグのバリー・ボンズなどから次第に明らかになり、やがてジョーンズもバルコ社のサプリメントを使い、結果的にドーピングに手を染めていたことが明らかとなりました。

ジョーンズは、IOCに対し、五輪で獲得した5個のメダルを返還しました。

当初は、ドーピングをしているつもりはなかったのでしょうが、その医薬品の効果により、激しいトレーニングからの回復が高まって、やがてその商品がなくてはならない身体になってしまったものと思われます。