『源氏物語』の誕生シーンは面白い

 

『源氏物語』の誕生シーンは、『枕草子』の誕生シーンに負けないぐらい、綺麗なしつらえを仕込みました。撮影では、帝に献上するために、一冊の本ができるまでの過程を本当に丁寧に描写していて。1人はこの役割、もう1人は違う役割というふうに、みんなで時間をかけて撮っていったので、一冊の本ができるまでのシーンは観ていて面白いと思います。

あとシーンでいえば、第31回で出てくる『源氏物語』を思いついた時の描写が好きです。カラフルな和紙や巻物が、ぶわ〜っと、パラパラと落ちてきて。それまでまひろが培ってきたものが結実して、「第2章が始まった」という感じがしました。第1回から31回までの、まひろの自宅の外での経験が、『源氏物語』につながっていくという“経験の前書き”のような段階だったのではないかなと思って。

だから、誰もがわかりやすいエピソードがちりばめられていた。『源氏物語』ができていくと、ここに出てくるこの人はあの人で、これはあの人なのかな? となっていく。これまでの話は、そうやって楽しめるように蒔いた種だったのかな、と。ここから1つずつ花を咲かせていく話になっていくのかと思うと、なるほどねと。脚本の大石静さん、さすがだなと思いました。

でも、物語を書くとなってくると、「これで前半が終わるんだ」という気持ちになって……。もう何時間でもお芝居してもいいぐらい、寂しくなりましたね。こんなに長い作品は初めてのことですから、撮影がすべて終わった時、何を思うんだろうなあと感じながら、よくわからない気持ちがこみ上げてきたりはしています。

7月22日には36歳の誕生日を現場でお祝いしていただきました。誕生日だからなのか、スタジオには特別、人が多かったんですよね(笑)。どこか照れくさいものですが、お仕事をしている時にお祝いされるのは嬉しいものです。毎日が1回しかないのはみんな変わらないけど、まだ36回しか「おめでとう」と言われていないのか、と。一方で、もう36回なのかとも思いますね。なんだか不思議な感覚です。