「愛しなさい」

映画の終わりの頃、海辺で編み物に興じる「過去のひと」になりつつあるピアフに、若い女性がインタビューするシーンがある。

「――若い女性へのメッセージは?」
「Aimez (愛しなさい)」
「――子どもたちには?」
「Aimez」
「――すべてのひとたちに」
「Aimez」

誰よりも身勝手に、愛を乞うて生きてきたピアフが「愛しなさい」というと心が揺さぶられてしまうのは何故なのか。

ピアフは決して聖人ではなかった。しかし偉人となった。それは彼女が私たちと同じ心をもっていたからだと思う。あまりにも愚かなピアフはそのまま私達であり、彼女の歌う歌詞は、そのまま私たちの想いだからだ。

『愛の讃歌』はこれからも間違いなく歌い継がれるだろう。「どんなに苦しくても、愛を知らずに死ぬよりよほどましなのだ」と、私たちに勇気をくれる、究極の名画である。是非この夏に御覧あれ!

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