理想の妻とは

頭中将の言葉を受けて、話を進めたのは左馬頭でした。

見た目も美しく若い女性で、この人こそはと思っていると、その女らしさがへんに計算された演技だったりする。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

また、家事ばかりに熱中して夫の話には無関心というのも厄介なもの、かといって素直なだけでは頼りない……。

左馬頭は言います。「今はもう、家柄などどうでもよいです、まして顔かたちの問題ではありません。ただただ、誠実で、おっとりとした女性でさえあれば」。

平凡で穏やかな女性こそ理想だという意見は、女性の家柄や容貌ばかりを重視した、当時の男性たちの価値観からみれば、むしろ変わったものだといえます。